ブラジャーを拾った時、鉛のような罪悪感が恵を襲った。
細身の四角い体に巻きつけられた下着の痛々しいまでのアンバランスさを
直視できずにすぐにチェック柄のスカートと白色のシャツを着る。
恵は脱ぎ散らかった制服を畳んで、部屋のゴミを片付ける。
恵はスカートから見える太ももがみっともないように感じた。
大事なものをゆっくりと失いながら、同じくらいに新しい悦びを感じていた。
周囲から注がれる冷ややかな視線など気にもせず彼は続けた。
さきほどまで体育の授業だったので汗臭さが漂っている。
「すいません。でも、勉強のほうに集中したいんです」
月島の実力だったらスポーツ推薦で大学だって狙えるんだぞ」
体育教師のわりにはお腹は出て、爽やかさの欠片もない体型をしていた。
「もう充分にバドミントンはやりきったと思ってます」
(本当はバドミントンを続けたいんだ。でも、直也くんに喜んでもらうためには仕方ない)
教室へ戻るために階段を上がっていると、数人の女子生徒とすれ違った。
弾むような笑い声と鮮やかに揺れる長い髪が駆け抜けていく。
ふわりと膨らんだチェックのスカートを見ていると、自分のズボンがとても窮屈に感じた。
(あんな風に華奢になりたい。こんな太い足や腕はいらないよ。可愛くスカート穿きたい)
振り返るとピンクのシャツに黒色のハーフパンツを着た優子が立っていた。
「さっき、沢田先生から聞いたけど、部活やめるって本当?」
恵の歯切れの悪い返事を吹き飛ばすように優子は叫んだ。
「嘘!だったらなんで直也みたいな奴と一緒にいるの?」
授業中もボーっとしてること多いし、練習もサボってばっかり。
あいつの周りから悪い噂しか聞こえてこないんだって。
「ねえ、小学校のときからずっと一緒にバドやってきたじゃない。
小柄な恵は優子と向かい合うと、ほぼ同じ位置に目がくる。
恵はさっきまで優子が立っていた場所を見つめながら、
大柄な直也が階段の上の踊り場に立つといつもより威圧感があった。
恵は体を離そうとしたが、肩をがっちりと掴まれていて動くことが出来なかった。
それでも誰かに見られるという恐怖心から抵抗しようとするも
窮屈なジャケット、ネクタイではなくリボン、空気を感じるスカート。
鏡に映ったのは女子高生の格好をした男の子だったが、
それから残された姉の服をちょくちょく着るようになり、
お小遣いを貯めてウィッグやメイク道具を買い揃えた。
幸いに小柄で女顔の恵は少し化粧をするだけで女の子には見えた。
鏡の中でどんどんと変身していく自分を見ていると、股間が異様なまでに熱くなった。
自分を慰めるとき想像の中で男とも女ともつかない存在になって快楽の海に浸った。
ある程度女装が上手くなると、今度は外に出たくなった。
夜中、家族が寝静まったのを確認して、こっそりと外に出た。
遠くに人影らしきものが見えただけでも、どこかに隠れる場所はないかと慌てた。
そこは野球グラウンドほどの大きさで、芝生を中心に遊具や噴水があった。
昼間は子どもで賑わっているが、夜はほとんど人はいなかった。
とある夜。冷たい風が吹いていたが、火照った体にはちょうど良かった。
内股になって胸を触りながら二本の指でスカートの上から股間を刺激した。
恵は女装しているときはしごくようなオナニーはしない。
デジカメを持って、ニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。
さっきまでの興奮はすっかりと引いてしまい、ただ狼狽えるしかなかった。
何週間か前に女の子を見つけて、最初はレイプしてやろうかと思ったけど、
そいつの顔に見覚えがあったんだ。同じクラスで喋ったことはないけど、
シャツの下にブラジャーを着てるんだよね。男なのに」
「月島くんのこの恥ずかしい写真、クラスの奴らが見たらどう思うかな。
恵は体を強張らせながらも、直也のゴツゴツとした手をはっきりと感じていた。
「脅してるわけじゃないんだ。最初に言ったろ。そういうの好きだって。
親は仕事で海外に行ってるから遠慮しなくていいんだぜ。
恵もこそこそと女装するのは嫌だろ、こんなに可愛いんだから」
そう言って直也は膨らんだ恵の股間をぎゅっと掴んだ。
勃起したことを他人に知られるというのは初めての経験だった。
恥ずかしさで頭が一杯になったが、俺の女になれよという言葉に強く惹かれていた。
恵はフライパンで野菜とお肉を炒めながら、三ヶ月前の出来事を思い出していた。
調味料や道具の位置は自分の家の台所より把握している。
直也の体を心配してやったことのない料理を必死で覚えた。
恵は毎日少しずつ掃除をして、今ではかなり綺麗になっていた。
身の回りの世話をするのがすっかりと生活の一部になっていた。
学校の制服にエプロン姿の自分を見ていると、若奥さまになった気分だった。
家の中では常にブレザーにチェックのスカートでいろと言われている。
野菜炒め、ポテトサラダ、具沢山の味噌汁を並べていると、ピンポンと呼び鈴がなった。
女装のことは直也以外には話していない。二人だけの秘密と思い込んでいた。
「おお、これが月島かぁ。いや、恵ちゃんと呼んだほうがいいかな」
いつも通りのジャージ姿で舐めまわすように恵を見ていた。
「いきなり部活を辞めるって言うから、心配してたんだぞぉ。
お前と仲の良いこいつに相談したら、原因を教えてやるって言うからついてきたんだ」
「おいおい、もうすっかり女の子だな。部活中の勇ましいお前とは大違いだ」
「まあ、確かに硬いな。けど、これくらいがちょうど良いんじゃないか」
「かぁ、可愛い子がお酌してくれたビールは最高だな」
料理を食べ終えて、直也と沢田はソファに座ってお酒を飲んでいた。
「料理も上手かったし、月島は本当に女の子に生まれたほうが良かったんじゃないか」
沢田がいることで男を演じている学校の自分が出てきてしまい、
沢田の顔はすっかり赤くなっていて、声もいつもより乱暴な調子になっていた。
沢田の前で裸になることは抵抗があった。しかし、直也の命令には逆らえない。
白いレースのエプロンは胸から股の辺りまで長さがあった。
拒否しようとしたが、直也がそのままにしろと怒鳴った。
「ほほー、確かに男だ。エプロンの一部分が膨らんでいるもんな」
「男のくせに化粧して、女の格好するなんて恥ずかしいとは思わないのか。
沢田はまるでAVのインタビューのようにねちっこい喋り方で指示を出す。
恵は直也の前に膝をつき、ズボンをチャックを下げた。
すでに男根が硬くなっている。パンツの上からでも分かった。
恵は直也のパンツを下ろす。そこには雄の匂いがプンプンと漂う男根があった。
それは恵の中にあった恥ずかしさを吹き飛ばし、雌としての本能を呼び起こした。
竿の部分を手でしごきながら、ジュルジュルと音を立て吸い始めた。
「こいつはもう俺なしじゃ生きていけないって言うんですよ」
口を離して、今度はアイスキャンディーを舐めるように
「学校では男を装っているけど、一皮向いたらこんな淫乱な雌だったんだね。
「うふふ、ここにとっても大事な直也くんの子どもの元が詰まってるの」
「熱くて、硬いのぉ。熱いザーメン、はやく恵に出してほしいなぁ。
直也くんの子ども妊娠したいもん、ザーメンで私の子宮をパンパンにしてほしいもん」
優子はスマートフォンにメールを書いては、消してを繰り返していた。
なかなか思った文章が書くことが出来ずにイライラして、
「ああ、またイライラしてる。こんなんだから恵と上手く喋れないんだよ」
自己嫌悪を振り切るように、またメールを書き始める。
「恵へ。今日はごめんなさい。友達のこと悪く言い過ぎた。
けど、私は心配なんだよ。このまま恵がどんどん遠くへ行ってしまいそうで」
本文には何の文章も書かれておらず、動画ファイルだけが添付されていた。
直也の男根をフェラしている様子が映しだされていた。
これはなにかの間違いだと確認するために停止することは出来ない。
動画の撮影者だろうか、聞き覚えのある声が恵に語りかけていた。
「優子?知らなーい。アタシには直也くんしか見えてないのぉ。